月山

高く秀麗な姿から太古の昔より信仰を集め、「祖霊が鎮まる山」と共に、庄内平野の人々には水を恵む「水分(みくまり)の山」「農耕の山」として信仰されている。
弥陀ヶ原(みだがはら)、東補陀落(ひがしふだらく)、佛生池(ぶっしょういけ)、などの地名は「過去の世を表す山」としての信仰をよく伝えている。
月山(海抜1,984m)は、その山頂を含むおおむね海抜1,400m以高の区域が国の天然記念物に指定されている。
出羽山地の南北方向に沿った大断層線に噴出した成層火山で、尾根筋や山頂部の嫌雪的植物群落をはじめ、溶岩台地にある北方の弥陀ヶ原湿原、東に張りだした月見ヶ原湿原と池塘群、東方斜面の残雪地帯とその周辺の雪田植生には、とりわけ貴重な植物が分布する。
クロユリ、オゼコウホネ、チシマヒカゲノカズラ、トウヤクリンドウ、リシリシノブ、ハクセンナズナ、エゾノツガザクラ、ミヤマヒナホシクサ等が原生さながらに咲き競っている。
また遺存種のアオモリトドマツがバラモミ沢の小区域に生育しており、コメツガが姥ヶ岳で発見されるなど保護・保全すべき数多くのものがある。
高山植物の宝庫としても知られる。
南東の山形盆地側からは、三日月形の穏やかな山容に見えるが、北西の庄内平野から見る山容は、噴火による崩壊跡がよく分かり、険しい山の印象を与えている。
羽黒山口登山道八合目から頂上にかけての西方(鶴岡市羽黒)は絶壁が多く、東方(庄内町)はなだらかな斜面が多い。
また、庄内平野から眺めると牛が寝そべった形に似ているところから、臥牛山(がぎゅうざん)とも称される。