羽黒な旅のココロとオススメ

shonaiheiya

初めての土地なのに、また来たくなる。
旅するたびに、来たくなる場所が増えていく。
羽黒の旅はそんな経験をさせてくれます。

かつて旅は誰もができるものでなく、税を納める旅であったり、兵役の義務のための旅であったり、限られた人ができるものでした。その中で巡礼の旅は、もっともポピュラーな旅のかたちだったようです。

羽黒山・月山・湯殿山を旅する出羽三山詣は、「西の伊勢参り」に対し「東の奥参り」とされ多くの参拝者を集めました。地域によっては、15歳になった男子はそれをしなければ一人前と認められないほど、出羽三山詣は重要とされていました。あの斉藤茂吉もそのようにして15歳で三山を訪れています。

山伏たちは、死者として山に入り、山を胎内として成長し、赤ちゃんとなって生まれ変わる修行を行います。これになぞらえ、出羽三山のそれぞれの山は、羽黒山が現世、月山が前世、湯殿山が来世、すなわち三世の浄土を表すとされます。江戸時代の出羽三山詣は、羽黒山から入り、月山で死とよみがえりの修行を行い、湯殿山で再生するというのが最もオーソドックスな巡り方で、生まれ変わりの意味をもつ「三関三渡」の旅とされました。

山伏の修行とも、江戸時代の奥参りと違っても、出羽三山を旅することは、今も新たな気持ちが生まれるものです。

羽黒の周辺地域は昔から農業と漁業が盛んです。庄内米は、それだけで満足するほどの美味しさ。特産物も多く、夏の香りわきたつ“だだちゃ豆”は格別です。まろやかで濃厚な旨みをもつ岩牡蠣とキリッとした地酒をあわせれば最高でしょう。

羽黒山麓の手向(とうげ)集落には宿坊が立ち並び、出羽三山への信仰をもつ人々が講(こう)を組んで全国から山を目指し訪れています。山上の参籠所や宿坊で食べる精進料理はこの上なく、土地に根付いた食材を用い、手間隙を惜しまず昔ながらの手法でつくられ、身を心ももてなしてくれます。

奥参りといわれた出羽三山詣のあと、旅の疲れを癒したのは、湯野浜、あつみ、由良、湯田川などの温泉郷です。四季を通じて新鮮な山の幸、里の幸、海の幸が旅人を迎えてくれるでしょう。

出羽三山をとりまく風土に育まれた文化。ここに生まれた信仰と旅のかたち。今日私たちが、この地を訪れることは、きっと人と自然とこころの古くて新しい関係に触れられる、貴重な体験となることでしょう。